今回ご紹介するのは、フレンチチェスト。
このチェストの表情を決定づけているのは、引き出しの「取っ手の装飾とレリーフ」です。

豪奢な真鍮製ハンドルにあしらわれているのは、「葉薊(ハアザミ=アカンサス)」のモチーフと思われます。
古代ギリシャ建築から連綿と続くこの古典的な意匠は、優雅に波打つような柔らかな曲線が特徴です。
さらに、その取っ手を縁取るように深く滑らかな曲線を描くレリーフ(モールディング)が施され、オークの力強い木目と相まって立体的な美しさを浮かび上がらせています。
イギリスのアンティーク家具で植物のモチーフといえば、スコットランドの国花でもある「シスル(アザミ)」。
シスルは、その棘のあるフォルムから守護や勇敢さを象徴し、イギリスの伝統的な家具によく彫り込まれます。
実用性を重んじた直線的でカッチリとした英国家具によく似合う、少し武骨で力強い、素朴な魅力を持っています。
しかし、フランスのアンティーク家具で植物のモチーフといえば、
「アカンサス(ハアザミ)」。
同じように植物をモチーフにしながらも、イギリス伝統のシスルのような鋭さや力強さではなく、
フランスなどの大陸家具(フレンチスタイル)に通じる、貝殻を模した「ロカイユ」とともに、踊るように軽やかで繊細なアカンサス模様が好まれました。
アザミとハアザミ、よく混同されがちですが、
植物としての分類や特徴、文化的な意味合いが大きく異なるのです。

そして、オーク材を用いたイギリス家具といえば、直線的で重厚、マスキュリン(男性的)な魅力を持つものが多いのが一般的です。
しかし、このチェストがどこかふわりとした軽やかさと華やかなエレガントさを持ち合わせているのは、
優美なハアザミのレリーフと、足元を飾るしなやかな猫脚によるものなのではないでしょうか。


もちろん、日常の道具としての使い勝手も申し分ありません。
艶やかな天板には、お気に入りのテーブルランプや季節のお花を飾って。
上段の2杯の小引き出しと、下段の広めの引き出しは、リビングで散らかりがちな小物を収納したり、ベッドサイドのナイトテーブルとしてお使いいただくのにも絶妙なサイズ感です。
端正でカッチリとした英国アンティークで揃えたお部屋の中に、あえてこのような曲線美が際立つフレンチの家具をひとつ取り入れていただくと、
空間に心地よいリズムと抜け感が生まれます。

シスルとは異なる、葉薊ならではの柔らかな陰影と、オーク材の温もり。
ぜひ店頭で、直接その魅力に触れてみてください。







