PARALLELS

PARALLELS―並走する二つのモダニズム。南の工場と北の工房―

家具には、その時代の思想と、ものづくりの哲学が刻まれています。
20世紀半ばの戦後ヨーロッパでは、暮らしのための家具を新しくつくろうとする二つのモダニズムが、異なる場所で異なる方法を選びながら、同時に走り始めました。

ひとつは、イタリアの「工場」。
イタリアの家具は、戦後の高度経済成長と工業化を背景に、国際展「Triennale di Milano(ミラノ・トリエンナーレ)」を舞台として発展しました。1951年、Marco Zanuso(マルコ・ザヌーゾ)のLady(レディ)が金賞を受賞します。この椅子には発泡素材と弾性テープによる座り心地の革新性が詰め込まれています。1953年設立のTecno(テクノ)からは、翌1954年にOsvaldo Borsani(オズヴァルド・ボルサーニ)のD70が出品され、同じく金賞を受賞します。背と座がそれぞれ独立して倒れる機構を隠さず、見せることを選んだ家具でした。1956年にはVittorio Nobili(ヴィットリオ・ノビリ)のMEDEA(メデア)がイタリアの工業デザイン賞Compasso d'Oro(コンパッソ・ドーロ)で高く評価されました。座から背までを、熱で三次元に成形した合板一枚のシェルでつくり、黒く塗装した金属脚で支えた椅子です。
工業化そのものが、新しい造形を生み出す力になりました。

もうひとつは、北欧の「工房」。
1927年、デンマークのキャビネットメーカーズ・ギルド展が始まりました。安価な大量生産品との競争に直面していた1920年代のデンマークの家具産業が、この状況を打開するために始めた新作発表の展示会の場でした。建築家と熟練した家具職人=マイスターが協働し、木工や張り、ファブリックといった手仕事を基盤に、新しい家具の可能性を探りました。Mogens Koch(モーエンス・コッホ)が自邸のために設計したブックシェルフは、その考え方をよく表しています。同じ寸法の箱を組み合わせ、縦にも横にも積め、壁にも掛けられる。蔵書が増えれば、足していけばいい。1932年からは家具工房Rud. Rasmussen(ルド・ラスムッセン)がこれを製作しはじめました。設計者が寸法を決め、工房が組む。ギルド展を支えた関係が、そのまま形になった仕事です。新しい工業技術も、この枠組みの中で扱われました。Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)が1952年にFritz Hansen(フリッツ・ハンセン)のために手がけたHeart Chair(ハートチェア/FH4104)は、成形合板を主要な部材に使った、彼の仕事のなかでは例外的な椅子です。
素材に触れ、手で確かめ、つくりながら形を磨いていく。そこには、時間をかけて家具を完成させる思想がありました。

「工場」と「工房」。
一方は、工場の技術が新しい形を可能にしました。もう一方は、職人の手がひとつずつ形を決めていきました。方法は正反対です。けれど、目指していたものは同じでした。それは、過去の様式を繰り返すのではなく、自分たちの時代にふさわしい家具をつくること。

本展では、この二つを、ひとつの空間に並走させます。
異なる思想から生まれた家具が隣り合うことで、それぞれの個性はより鮮明になり、同時に両者に共通する「未来の暮らしをつくろうとした意志」が浮かび上がります。
二つのモダニズムは、半世紀以上の時を超えて、いまこの空間で再び並走します。

PARALLELS

PARALLELS

―並走する二つのモダニズム。南の工場と北の工房―

会期: 2026年11月14日(土) - 11月29日(日)
TALK SESSION

バイヤーと読み解く「南の工場と北の工房」 ― 買い付けの舞台裏とフロアツアー ―

対極のアプローチで生まれたイタリアの工業美と、北欧の手仕事。企画展の開催にあわせ、バイヤーによる座談会&店内ツアーを開催します。買い付けのストーリーを聞き、実物に触れながら構造の魅力に迫る特別なプログラム。皆様の感性に響くモダニズムを、ぜひ見つけにいらしてください。

日時: 11月14日(土) 15:00 - 15:50
PARALLELS―並走する二つのモダニズム。南の工場と北の工房―

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