ポール・ケアホルム(1929–1980)は、20世紀デンマークを代表する家具デザイナー。木材主流の北欧デザインにおいて、スチールを主素材として美しく昇華させた異色の存在として知られます。

建築家ミース・ファン・デル・ローエらのモダニズム思想に強く影響を受け、金属のシャープさとレザーや籐などの自然素材を巧みに融合。一見冷たく見えがちな構造の中に、洗練された品格と快適な座り心地を両立させました。
接合部やネジの細部に至るまで無駄を削ぎ落としたミニマルな「構造美」を追求し、時代を超えて愛され続けるアイコン的プロダクトを数多く残しました。
中でも名作として知られる「PK22」。

最大の特徴は、薄くシャープな見た目からは想像できない「しなやかな座り心地」。
フレームに使用されたスプリングスチールが、体を預けると適度に撓み、優しく包み込みます。

無機質な金属フレームと、レザーや籐といった温かみのある自然素材とのコントラストも絶妙です。計算され尽くした美しさが評価され、1957年のミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞しました。


さて、そんなPK22ですが、現在はフリッツ・ハンセン社が版権を持ち、製造販売をしておりますが、初期の1956年~1980年までは、EKC(E. Kold Christensen)社が製造しておりました。EKC社製の流通は少なく、ヴィンテージマーケットにおいても非常に高い評価をされております。


今回、そんなEKC社製と、フリッツ・ハンセン製の個体が同時に並ぶという大変レアなタイミングになりましたので、この機会を逃すまいと、実際のディテールやサイズの違いなどを比較していきたいと思います。
それでは早速。
まず正面からと横から、それぞれ並べて見ました。


ぱっと見ると大きな差は無いように思えますが、
脚部の開き具合や、シートの角度等に微妙な違いが見受けられます。
詳しくみていきましょう。
まず、上部から見ると脚部の違いがよく分かります。


前脚と後脚の全長を比べると、フリッツ・ハンセン製はより前側に長く、EKC製後ろ側に長いのがわかります。


脚元によった写真を見ると、確かに違いがありますね。


フリッツ・ハンセン製の方が斜め、EKCは立っている印象。
脚部の全長としては、少々フリッツ・ハンセン製のが長いでしょうか。
シートに関しては、より分かり易い違いがあります。


こちらも脚部同様、フリッツ・ハンセン製の方が傾斜が強いのが分かります。


どちらが安楽性に優れるかは個人差によりますが、
一つの参考にして頂ければと思います。
さらに大きな違いはシートの固定方法。
フリッツ・ハンセン製は裏側にボルトが隠れますが、EKC製は表に露出しております。


これも好みが分かれるところですが、ボルトをポイントで見せるようなEKC製の構造と、ミニマルなデザインを極限まで追求したフリッツ・ハンセン製も甲乙つけ難いところですね。
生産製等の側面から改良されていった可能性もありますが、これも時代の流れを感じられる魅力的なポイントです。
シートの素材に関しては、フリッツ・ハンセン製でもラタンのラインナップは現在でも存在しますので、ヴィンテージとの比較とはなりませんが、レザー、ラタン共にキャラクター性があり素晴らしいですね。

レザーはなんといっても経年変化を楽しむ事ができ10年、20年と使用していき、ヴィンテージピースに育てていくのが醍醐味。座り心地もしなやかで快適です。

ラタンの魅力はスチールフレームとの素材のギャップといったところでしょうか。
相反するような2つの素材ですが、それらの大胆なコントラストが唯一無二のキャラクター性を表現しております。
最後に、それぞれの刻印についてですが、フリッツ・ハンセン製はフロント側に。

EKC製は後ろ側に入っております。

ポール・ケアホルムの才能を見抜き、プロデュースに取り組んだEKC社と、現代において流通を盛んにし、さらに知名度を上げたフリッツ・ハンセン社。

共にデザインへのリスペクトを感じられる逸品です。
是非、現物を見比べてみて頂き、ヴィンテージの魅力をお楽しみ下さい。








