Lloyd’s Antiques

Journal

ロイズ・アンティークス ファクトリー 2021.10.30

構造を知ることでみえてくるもの

日々体を動かす職人にとってはちょうど良い季節になってきましたね。 先週はここ綱島倉庫でウェアハウスツアーが開催されました。お越しいただいた皆様、有難う御座いました 。 初めてお越しいただいた方には、このロイズの中核であるウェアハウスをどう感じていただけたのか気になりますが、 我々レストアスタッフとしては御購入いただけた商品をしっかりとレストアさせて頂く事に心血を注ぐという面持ちで溢れています。ですので今週は御購入頂いた商品のレストア作業がメインだったのですが、折を見てこれから店頭に並ぶ商品にも手を施しました。 その中で今回ご紹介させて頂くのは、ドローリーフテーブルのレストアです。ドローリーフテーブルとは16世紀頃にイギリスで生まれたとされる伸長式のテーブルです。 IH001338 IH001338-1  天板下に備えられたサブ天板を、サイドに羽のように伸ばすことで天板のサイズを変えられる非常に便利な構造となっています。簡素な構造ながら、左右または片面ずつの拡張も可能で、非常に実用性の高い優れた仕組みになっています。 まずは天板とサイドの羽を外していきます。ドローリーフテーブルは誰でも簡単に外れるように作られています。 KIMG0337 KIMG0324 写真のようにこのテーブルの構造がすっきりと見えてきました。 今回のレストアは全体のグラつきなのですが、構造上縦方向には貫(ぬき)と呼ばれる補強材が差し込まれていて、しっかりと固定されていますが、横の動きに対してはほぼフリーな状態です。 KIMG0325 KIMG0327 KIMG0326 ですのでこの横の動きを補強するためにそれぞれの脚と支柱の付け根の左右、更に支柱と幕板(まくいた)と呼ばれる天板の下に幕のように横長に張った板の左右に隅木(すみぎ)と呼ばれる補強材が取り付けられています。 この隅木の接着力が弱ってたり経年による木そのものの変化で強度の弱まりグラつき始める場合があります。 KIMG0329 KIMG0330 この隅木を一度取り外し、しっかりと付け直すという作業を行っていきます。 KIMG0334 KIMG0333 KIMG0332 古い接着剤を取り、支柱と脚/幕板に隙間なく再び取り付けていきます。もし隅木自体が脆弱化しているようだったら、まったく同じものを強度の高い木材で作り直したりもします。 KIMG0335 一見単なるこんな事で!?と思われるかもしれませんが、実際にしっかりとこの隅木を付け直す事だけで、グラつきは無くなり構造上問題なく使用可能になりました。 もう一点問題があったのは、サイドの羽を拡げた際に羽がばたつくというものです。これは、羽を広げた際に下に落ちないために受けと呼ばれる角材が取り付けられていて、その角材と羽を伸縮させるためのレールとの間に隙間があり、この隙間分だけばたつきが起きているという問題です。 KIMG0339 KIMG0340 このレストアもそんなに複雑なものではなく、この隙間の厚み分だけ羽のレールの先に木っ端(こっぱ)を付けるだけで、このばたつきも解消されます。 KIMG0341 KIMG0342 KIMG0336 今回のご紹介は以上になります。今回紹介した隅木のように一見何故こんなところにこんなものが。という疑問も湧いてくるアンティークの世界ですが、それはデザイン性にこだわったというだけでなく、構造を考えた上で更にどうそこにオリジナルなデザインを組み込むかを考えて創り上げた高等技術だという事です。 KIMG0352

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