デスクの上に佇む、美しい木製のファイリングチェスト。

真鍮の取っ手が整然と並び、鍵穴には黒いタッセルが揺れています。

このチェストは、1910年代に特許を取得した「THE SHANNON」社の製品。

底部の真鍮プレートには

「THE SHANNON LETTER FILING CABINET By Royal Letters Patent.」

の刻印が残り、王室特許を受けた正式な高級品だったことを物語っています。

6つの引き出しが、書類や大切なものをしっかりと収納。真鍮の取っ手を引くたび、

木の重みと、100年以上の時を経た家具ならではの安定感を感じます。

引き出しの内部には、経年で味わい深くなった木の仕切りが今も残っています。

このチェストの最大の特徴は、両開きの扉。使う時は扉を開いて引き出しにアクセスし、使わない時は扉を閉めればすべてを隠して美しい木の箱に変わります。鍵をかければ、大切なものを完全に守ることができる安心感。黒いタッセルが揺れる鍵穴が、「ここには特別なものが入っている」という物語を語りかけます。

かつてはオフィスや工房で、書類や型紙、設計図を守っていたこのチェスト。

現代では、手紙、写真、アクセサリー、文房具、大切な思い出の品々の収納として愛されています。

時を経て深みを増した木の艶、真鍮の鈍い輝き、そして使い込まれた痕跡。

このチェストは、ただの収納家具ではなく、時を超えて届いた「秘密を守る小さな書庫」なのです。