Lloyd’s Antiques

Journal

ロイズ・アンティークス エゴイスト 2024.09.13

Hans J. Wegner

デンマークデザイン家具デザインの巨匠、ハンス ウェグナー。
 
彼のプロダクトは、現代の日本のインテリアにも深く浸透し、
中でもベストセラー作品である「Yチェア」は誰もが目にした事があるのではないでしょうか。
 
現代においても色褪せる事のないデザインを数多く生み出した彼は、
若干17歳にして「マイスター」の資格を取得し、木工の職人として道を歩みだします。
父親は靴職人であったので、クラフトマンとしての血筋が強くあったのでしょう。
 
コペンハーゲン美術工芸学校に進学することで、
デンマークデザインの父、コーア・クリントが提唱した人間工学に基づいた設計と、
過去のデザインを重んじつつ、現代のデザインに昇華させる「リ・デザイン」の精神を学びます。
 
「古典は我々よりモダンである」
 
 
クリントの教えの通り、先のYチェアは、
中国、民時代のデザインをルーツに持つ事でも知られております。
 
彼は、伝統的なクラフトマンシップ精神を持ちつつも、
家具産業の発展に対しても積極的に取り組みました。
 
クオリティを保ちながらも、機械を使用した製造工程を柔軟に取り入れ、
大量生産することで、多くの人々の手に良質な家具が届き生活が豊かになると考えたのです。
 
 
そんな精神の下、ウェグナーは様々な家具の製作を手掛けると同時に、
生産の過程において、多くの工房にデザインを提供します。
 
1951年に発足したサレスコと呼ばれる組合は、
カール・ハンセン
アンダー・タック
RY Mobler
GETAMA
AP stolen
の、5社から成り立ち、
それぞれの得意分野にて、ウェグナーのプロダクトを製作していきました。
 
これらの写真のソファは、その中の1社であったGETAMA社より発表された「GEシリーズ」。
 
 
ウェグナーのソファといえば、思い浮かべる方も多いでしょう。
ベッドのマットレスメーカーであったGETAMAは、
スプリングの技術に優れ、サレスコの中でもソファの製作が主でした。
 
  
カール・ハンセンは初期からこの組合に属し、
長きに渡り、ウェグナーのデザインを製品化してきました。
  
CH28は、ウェグナーならではの美しさと機能を追求した、
印象的なフォルムと機能が絶妙なバランスを見せる、
素晴らしい座り心地を持つチェアです。
  
丸材で構成されたしっかりとした脚と、
成形合板製の薄い背と座が作り出すコントラストが特徴の一つですね。
 
 
 
そして、主に張りぐるみのソファを製作していた工房、
AP Stolen.
 
AP32はGEシリーズと比較すると、流通が少ないプロダクト。
すっきりとしたデザインであり、シートの奥行きは浅めで、
日本人の身体にもマッチしやすいバランスです。
 
後にご紹介する、ウェグナーを代表するプロダクトのひとつ、ベアチェアを製作していたのも同工房であり、
シンプルながらクラフトマンシップを感じ、彼らしい普遍的なデザインバランスの魅力を感じる事ができます。
 
そして、主にストレージを製作していたRY Moblerの家具の中では、
蛇腹式に開閉扉を備えたサイドボードのシリーズが有名です。
  
 複数の木材と、脚部にも数パターンの展開がありますが、
こちらはチーク材を用いた一台。
 
極めて洗練されたデザインであり、
細かいピッチで正確にスリッドが入った扉部分を再現するには、
大変高い技術が必要であることは容易に想像ができます。
 
まさに機能美という言葉がピッタリのサイドボードですね。
 
 
そして最後にご紹介するのは、AP Stolen社製の、AP19。
通称ベアチェアです。
 
  
 
彼の代表作であることはさることながら、デンマーク家具デザインのアイコン的なピースとなっているプロダクトです。
 
 
現在は、当時AP Stolenと共に製作活動をしていたPPモブラーによって復刻されておりますが、
1971年に閉業したAP Stolen社製のものはヴィンテージのみ存在し、世界的に高い人気を誇ります。
 
 
  
計算されたシートのデザインはもちろんの事、
背面に設置されたポケットコイルにより、唯一無二の座り心地と、
安楽性を実現しております。
 
全体のディテールも素晴らしく、どの角度からみても、
そのアイコニックな存在感に心躍ります。 
生地はデンマークにて60年以上の歴史を持つDanish Art WeavingのLIMAを使用。
ヴィンテージラインの中でも、更に個性の光る一台に仕上がりました。
 
 
 
人々の生活の為にデザインし続けた、デンマークデザインの巨匠、ハンスj.ウェグナー。
実際に作品に触れる事で、彼のデザインに対する想いを感じて頂ければと思います。
是非、ご覧ください。
 
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