Lloyd’s Antiques

Journal

ロイズ・アンティークス ファクトリー 2022.04.25

【違い】を楽しむ。

久々のロイズファクトリーからの発信となります。
ここ最近の天候の異常な変動は、木材のような「生きている」素材を扱う我々ロイズにとって非常に難しい環境であります。ですが、その様な問題にも向き合いながら様々な解決の糸口を見つけていくのは、非常にうれしくもあります。

今回ファクトリーから紹介させていただくのは、ベントウッドチェアのレストアです。

今では大変知られている存在となったベントウッドチェアですが、その最大の魅力の一つでもあるのは、一脚一脚の存在感を浮きだたす「違い」ではないでしょうか。大量生産の椅子だからといって価値が落ちるという事は一切ないのです。 座面のデザインの多様性や背中の形状、脚の曲がり具合まで細かい部分の違いというものが際立っています。

我々レストアラーもそれぞれのベントウッドチェアの違いというものを感じながら修復を施しています。一脚一脚で少しずつ作業のアプローチも変えていかなくてはいけません。大量に入荷した時期なんかは一日に10脚以上修復する事もあります。 ですが修復内容に関しては、そんなに複雑なものではないため、ベントをレストアする際にはスピードとスムーズな作業が必要となってきます。その中でも一脚一脚少しずつ異なるため注意深く進めなくてはいけません。  今回はベントウッドハイチェア フープの修復内容を紹介します。ベントのレストアでは長年の使用による脚のグラつきや割れなどが多くあります。その他では虫喰いによる小さい穴や傷、塗装の剥がれがあります。


グラ直しの作業の様子となります。まずグラ直しの為には脚と座の間に取り付けてある貫を外さなければいけません。この貫は補強としての役目も果たしていますが、今回のベントのような非常に美しいデザイン性も兼ね備えているケースもあります。

この貫は古いマイナスネジで固定されている場合が多く、そのマイナスネジの古さからも歴史を感じます。

貫を取り外すとより前足のグラつきがわかりました。昔の糊が切れている場合や隙間が出来てしっかりと接着しきっていない場合などがあります。

それから脚を抜き、古い接着剤を掃除し、新しく接着剤を入れ固定していきます。 シンプルな作業ですが、ここからまた100年以上生きてほしいという願いがあるため気の抜けない作業です。

こうして再びしっかりと固定され、機能性を取り戻したベント生まれ変わりました。 このように大量生産されたベントウッドチェアであろうと我々職人も些細な違いに 取り扱う喜びを見出しています。

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