Lloyd’s Antiques

Journal

ロイズ・アンティークス ファクトリー 2022.05.31

販売スタッフによる、チェアの張り替え体験 ~後編~

さて、先日に引き続き、販売スタッフである私が、
チェアの張り替えを体験した際の模様をお送りさせて頂きます。
 
 
前回は、主に現在の張り地を「剥がす」作業をお送りさせて頂きました。
工程を通して座面の構造や、デザイナーの意図など、
多くの気付きがありましたが、いよいよ今回は後編。
「張る」作業に挑みます。
是非、前回のJournalと併せて、ご覧ください。
 
 
今回使用するレザーは、ヌメ側の厚さ1.3mm。
 
 
この厚さが後に大きな苦労を招くことになります…。
 
まず、本番前に、数種類の残布で練習をして、感覚を掴みます。
 
 
工程の写真は少ないですが、生地の伸縮方向を考えながら、
張り上げていく必要があり、とても難しい作業でした。
 
 
その上、強いテンションを掛けながら、
的確な場所にタッカーを打ち込んでいかなければならず、
作業を進める毎に握力が失われていきます…。
 伸縮性の高い生地で慣れたら、伸びの少ない生地での練習。
 
 
張っては剥がしてを繰り返し、大凡感覚を掴めたところで、
本番に望みますが、永く使うことを見据えて、
その前にウレタンも交換致しました。
 
 
準備が整ったところで、いよいよ本番に望みます。
 
 
まず中央にタッカー打ち、そこからテンションを掛けながら張り込んでいきます。
 
 
ですが…。
 
 
とにかくレザーが固く、全くもって練習で掴んだ感覚と異なります。
 
 
テンションを掛けた状態をキープしたまま、タッカーを打つのが本当に難しく、上手く張れているようでも、全体的に緩い仕上がりになってしまいます。
 
途中からは、座面を立てて、
全身の体重で引っ張りながらテンションを掛けます。
 
 
しかし、それでも上手く力が伝わらず、レストアラーの指示でペンチの登場です。
 
 
ですが、ここまでしても、テンションに不足があった為、タッカーで仮止めし、その横で更にテンションを掛け、固定。
先程、仮止めしたタッカーを抜き、また更にテンションを掛けたポジションで固定する作戦に変更。
 
 
ほんの数ミリづつですが、穴の位置がズレていきます。
 
 
とはいえ、この先の時間が思いやられる進捗。
私の握力も限界でありましたので、
ここで泣く泣くレストアラーへバトンタッチ…。
全てを自分だけの作業で完結させようと意気込んでおりましたが、
張替えの難しさを、身に染みて感じました。
 
 
 さてここからが文字通り職人技。
私と同様、ペンチで引っ張って、タッカーで止める作業は変わりませんが、
その手際の良さと、無駄の無い動きは、まさに熟練した職人でしかなし得ない技術でしょう。
革の擦れる音と、タッカーの音が小気味よく響き渡ります。
時には木槌で叩いてテンションを調整。
みるみる張り上がっていき、最後に枠に合わせてレザーを切り落とします。
そして、フレームに設置すれば…。
完成です!
分厚く、曲線部分のシワを逃がすのがとにかく困難でしたが、
大変美しい仕上がりに!
本当にレストアラーの技術には頭があがりません…。
私達の扱う、アンティーク・ヴィンテージ家具は、
過去、現在の職人の思いが詰まったプロダクトです。
是非、その様な背景にも想いを馳せて、
家具をご覧頂ければ幸いです。
さて、2回に渡って張替えのJournalをお送りさせて頂きましたが、
いかがでしたでしょうか。
構造などをご理解頂き、
これから家具を末永くお使い頂くきっかけになればと思います。
また、今回張り替えたチェアも、ヌメ革のエイジングサンプルとして、
また機会があればご紹介させて頂こうと思います。
皆様と、家具を使い込む楽しみを共有出来れば幸いです。
今後のファクトリージャーナルも是非、ご覧くださいね。
また、6/12(日)には、ロイズ・アンティークスウエアハウスにて、
弊社レストアラーによる、アンティーク、ヴィンテージ家具の修復作業を
ご覧いただける催しを予定しております。
日々のお手入れから、使用に対するお悩み、家具の構造等、
実演を交えながらご説明させて頂きますので、お気軽にご相談下さい。
※詳細は店頭スタッフへお問い合わせ下さい。
 
 
 
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